ADHDの日課

19歳〜。苦手な日課です。ADHD(手帳は二級) 名前欅 流了リ(けやき

先生のネクタイ

わたしは100点ではない花丸印をもらうことが寂しい。

100点ではない花丸は、飽きてしまった要らない称号。

今朝、その花丸印は褒められたものでないと泣いた。



100点の花丸印をもらいに学校に行くことにした。

授業中、先生のことを考えていた。

ネクタイが真っ黒だったから。

 

淡い色のシャツ。

淡い色のジャケット。

日本人の肌色。

だけど、先生のネクタイは真っ黒。

先っぽがまっすぐのネクタイ。

 

「先生、どうしてネクタイが真っ黒なの?」

「先生、どうしてネクタイの形が普通じゃないの?」

 

そうだ、終わりの鐘が鳴ったら、

一番最後に先生に駆け寄った生徒になって聞いてみよう。



そう決めたら授業に集中することができた。



けれどすぐに、

そういう質問は失礼か、又は無知かもしれないし、

いくら生徒の疑問に頑張って答えてくれるような先生だって、授業とは関係ないとあしらわれるかもしれないと、考え直した。

もし、自分が傷つくことになるのならやめようかなぁ...。



こそこそケータイで検索したら、変わった形のネクタイの種類名は簡単に出てきた。

どうして先生のネクタイが「それ」なのかなんて、
明日になればわたしだって忘れているだろう。

それは聞いた所で、良くて世間話をするだけで終わること。
聞かなければ無かったことになること。

いつか先生の性格や生活を知る日がくれば、予想くらいは立てられるかもしれない。
けれどもし、
そんな日が来たとしたって、わたしは今日のネクタイの意味を知ろうとはしないだろう。

授業が終わってまた次の授業がはじまる間、先生が廊下を歩いていた。

真っ黒いネクタイ。



まだ、今日だから。

 

聞いたって忘れるかもしれないし、もし傷つくことを言われたって
無かったことになるかもしれない。

だから、聞いてみることにした。

 「先生、どうして今日のネクタイは黒なの。」


「黒が好きだからかな。」

と先生は言った。



「そうか、先生は黒が好きなんだなぁ。」



それなら色々なところを黒くすればいい、

と思ったけれど、

先生だから、全部黒にしないのかもしれない。

また先生は、そういうファッションセンスをしていないのかもしれない。



そういうことは、聞かなかった。

先生は黒が好きだから黒のネクタイを着けた。

これだけで充分にわたしの気分は軽くなった。


黒が好きだから、黒いネクタイをする。
黒が好きだけど、淡い色のシャツも、淡い色のジャケットも着る。



心なんて、消していいんだ。

100点でない花丸印の無理解に傷つく心も、

いくら消してもいいのだと。

欅流リ